HOME > お餅大解剖【お餅の歴史】 > 日本人とお餅の関係

お餅大解剖【日本人とお餅の関係】

古くから日本人はお餅をハレの日に欠かさず食べてきました。
出産、人生の門出、お祝いなど人生の節目にお餅と日本人には深い関係があります。
お正月に食べるお雑煮以外にも、ひな祭りの菱餅、端午の節句のかしわ餅など季節を感じられるお餅もあります。

 

季節とお餅

2月15日 涅槃会(ねはんえ)
紀元前486年のこの日に仏教を開いたお釈迦さんがおなくなりになったとされています。お寺で行う法会(ほうえ)の時に、京都ではヨモギ入りの団子を供養として作りました。地方によって白い団子を子供達に分け与えました。
3月3日 雛祭(ひなまつり)
女の子の順調な成長を祈って家族で祝います。
この日は菱形の三色の餅を重ねた菱餅をひな段に飾ります。
赤は魔除け、緑も魔除けに通じますが、心やさしい人になること、そして白は清らかにという意味があります。緑の菱餅は野草のヨモギをゆでて餅に搗きこみます。餡を包んだり、小さく団子にして餡でまぶしたりします。米粉のヨモギ団子もあります。
桜餅
春の桜のころに食べる明るい桜色に染めた糒(ほしいい)を使った餅です。糒はモチ米を蒸して乾燥させた保存食で、奈良時代からあります。
糒を熱湯(同量)で戻して混ぜて練り、餡を包んで、塩漬の桜の葉で包みます。椿の緑葉ではさむと椿餅です。
春の彼岸、春分の日
この日はぼた(ん)餅を作って仏膳や先祖の墓に供えます。ウルチ米とモチ米でごはんを炊いて半搗にして飯粒をつぶし、まるめて小豆餡で包みます。逆に餡をごはんで包み、きな粉や青のり、黒ごまなどをまぶしたものもあります。土用の丑の日に供えると土用餅、秋の彼岸に供えるとはぎの餅(おはぎ)と呼びます。
入学、卒業、進学祝い
春、桃の花咲く3月と桜が咲く4月は卒業と入学・進学の胸ときめく喜びの季節です。親せき、縁者からその喜びを祝福するために祝餅が贈られます。
5月5日
もともとは3月3日と同様に女の節供でした。武家社会になった鎌倉時代から男の節供になったといわれています。米粉で作る餡入りの柏餅を食べるようになるのは江戸中期からです。
7月7日 七夕餅
七夕にはそうめんを食べることは常識ですが、地方(農村地帯)では祖先の霊を迎えるために餅を供えます。昔は七夕(旧暦7月7日)とお盆(旧暦7月15日)とはつながっていました。新暦の現在では7月に盆を行うのは東京のみ。地方の七夕は7月7日、お盆は8月15日です。
土用餅
梅雨が明けると夏の陽ざしがまばゆく、7月下旬に入ると暑さが一段と厳しくなります。その暑さを乗り切るため、京都では土用餅を食べて体力をつけるといわれています。
8月15日 
盂蘭盆会(うらぼんえ)
お盆はご先祖様が家に帰ってくる日。そのお祝いに餅を供える家が多く今も残っています。 お盆はまた畑作物の収穫祝であり、ご先祖様と一緒に祝ったのです。 米粉の団子やモチ粉から作る最中(もなか)、あるいはおはぎなども供えます。
月見団子
仲秋の名月は美しい。この日、萩やすすきと一緒に米粉で作った団子を供えます。これを月見団子といいます。杵型(きねがた)にして餡で巻く土地があったり、里芋やさつま芋、果物なども一緒に供えます。
秋の彼岸、秋分の日
おはぎや米粉の団子を春の彼岸同様に供えます。
(い)の子餅 
10月の亥の日 13日前後
西日本を中心に、この日子孫の隆盛と無病息災を願い、亥の子餅を食べました。今日ではすたれています。
11月15日 七五三
子供の成長を祝う日で明治以降盛んになりました。
三歳と七歳の女児、五歳の男子が着物を着て、親子連れだって氏神(うじがみ)に成長したことへの感謝とこれからもお守りくださるよう願うために参詣します。親せき、縁者からお祝餅を贈り、それを食べます。七五三のお祝い返しに“千歳飴(ちとせあめ)”を返すのは江戸末期からです。

 

行事とお餅

クリスマス
米粉でデコレーションケーキを作って楽しむのが、これからの日本のクリスマス。蒸し器で蒸したり、オーブンで蒸し焼にして作れます。
正月
正月は1年の初め。一年の計は元旦にありと昔からいわれてきました。家族の安全と円満(仲良く)、無病息災(健康であること)、学業の向上を願って鏡餅を拝み、鏡餅の分身である小餅を入れた雑煮を食べて安心を得ましょう。
昔は正月の小餅を年魂(玉)として家族全員に配りました。これがお年玉だったのです。
お宮参
大昔は生まれて100日前後に氏神に親子で参詣しましたが、現在は30日前後です。男子は赤い文字の大、女子は小とおでこに書きます。この日に親せきからはお祝いの餅が贈られます。 お宮で着物にお守りをつけてもらいます。
お誕生餅
農村では地域によって、生まれてから1年経った1歳の誕生日に1升(1.8リットル、約1440g)分のモチ米で餅を作り、これを「一升餅」と呼び、子供が力持(立派に成長するよう)になるようにとの願いをこめて、その子に背負わせます。
厄落とし(厄払い)
昔は土用、二百十日、二百二十日を厄日とし、災害が起こりやすい日とされました。 そして節分、大晦日も厄払いの日でした。厄払いはその年の厄を払い清める日。 昔は節分は12月でした。 3つ目に男女の厄落し。生まれてから幾年目が厄年との考えは中国から伝わりました。 男は25、42、61歳、女は19、33、37歳が厄年とされ、厄払いするために餅まきをする土地が今も残っています。また近所に配ったりします。
棟上・新築祝い
新しい家を建てる時、家の骨格ができ上がり、完成近くになると、近所の方に祝い餅を配る地方が今もあります。地方によっては餅まきをします。

 

参考文献 : 奥村彪生『おくむらあやお ふるさとの伝承料理11 わくわくお正月とおもち』農文協刊

奥村彪生

 

奥村彪生(あやお)

 

日本で唯一の伝承料理研究家。飛鳥万葉時代から江戸、明治、大正ならびに昭和の戦後まで、全国のお雑煮やまんが「サザエさん」などの様々な料理を文献記録に基づいて再現、展示会を開催。現在も若狭おばま食文化館で順次展示されている。世界の民族の伝統料理にも詳しい。2009年、めんの研究で学術博士(美作大学・大学院)

[略歴]

1937年和歌山生れ。近畿大学理工学部中退。2009年美作大学大学院卒業。神戸山手女子短大ならびに神戸山手大学教授、奈良女子大非常勤講師を歴任。現在、美作大学大学院客員教授、大阪市立大学大学院生活科学研究科非常勤講師。奥村彪生料理スタジオ「道楽亭」主宰。

[社会活動]

平成12年度和歌山県民文化賞受賞。NHK「きょうの料理」、「関西ラジオワイド 旬の味」、「日めくり万葉集」などに出演。

[著書など]

『日本めん食文化の一三〇〇年』(農文協)/絵本『おもしろふしぎ 日本の伝統食材』既刊10巻(農文協)/絵本『おくむらあやお ふるさとの伝承料理』全13巻(農文協) /『聞き書 ふるさとの家庭料理』全20巻解説(農文協)/『おくむらあやおの ごはん道楽!―古今東西 おいしいごはん料理―』(農文協)/『料理をおいしくする仕掛け―日本の食べごと文化とフードデザイン』(農文協) /『料理屋のコスモロジー』共著(ドメス出版)

10月10日はお餅の日 全餅工 国内産水稲もち米100%マーク