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増田明美さん、千葉真子さん、こばたてるみさんによる「お餅トークショー」

スポーツジャーナリストの増田明美さん、スポーツコメンテーターの千葉真子さん、スポーツ栄養士のこばたてるみさんから「スポーツに効くお餅のスゴイ効能」をテーマにお話を聞かせていただきました。
当日は増田さんがキャスター役となり、スポーツシーンの裏話やお餅の食べ方などを教えていただきました。

  お餅トークショー
増田さん : 千葉さんは選手の時はいろいろと食事に気をつけていましたよね?
千葉さん : そうですね。ランナーは血液が命なんですよ。アスリートというと、「細かくカロリー計算なんかをしているんじゃないの?」とおっしゃる方が多いんですが、実はそんなに細かくはカロリー計算はしていません。
私は、宗監督さんのチームと、小出監督が教えてくださったチームと、この2チームに在籍していたんですが、お二人の監督さんは共に、「楽しく、おいしく食べることが大事だよ」ということを大切にされていたんです。 その上で、栄養のバランスを考えた食事なんですね。簡単に言えば、定食スタイルで食事を摂ると、いろんな食材をバランスよく摂ることができるというのが1つポイントですね。
増田さん : 定食スタイルですか?
千葉さん : はい。食堂などに、定食がありますでしょ?
お餅トークショー 増田さん : 今、血液が大事だっておっしゃいましたが、それはどうしてですか?
千葉さん : ランナーというのは汗をたくさんかきますので、汗と共に栄養素が流れ出てしまうんです。それプラス、走る時に足の着地をする際に、ヘモグロビンが壊れてしまうので、特に女性は貧血症状になりやすいんです。ですから鉄分を毎日、多目に摂るようにしていたんです。
増田さん : レバーとか、ほうれん草とかですか。
千葉さん : はい。小出監督のチームにいる時は、朝と夜と、毎食、レバーとひじきがもれなく付いてくるんです。
増田さん : 毎食出てきて飽きないですか?
千葉さん : 飽きますよ。だから寮のおばさんがカレー味にしてくれたり、ケチャップ味にしてくれたり、いろいろ工夫してくれるんですが、夏の暑い時期は、練習で疲れてるし、パサパサしていてあんまり好きじゃなかったので、食べ辛くって・・・。私はレタスの下にレバーを隠して残していたんですよ。そしたら小出監督に、「千葉ちゃん、ちゃんと食べないとダメだぞ、グフフ」とか、いつも言われていました。
増田さん : 私もそれは聞いた事があります。取材に伺った時に、小出監督に、千葉さんがいつも隠していると。だからお箸でね、「千葉ちゃん、見つけたよ」って。
千葉さんはお餅との関係はいかがですか?
千葉さん : 私はいつもレース前にお餅を4つくらい食べていました。
増田さん : 4つも食べるんですか?
千葉さん : はい。多いでしょうか?普通の大きさのお餅です。というのも、マラソンレースを1本走ると、大体3000kcalのエネルギーが必要なんですよ。
増田さん : 3000kcalってかなりですよ。
お餅トークショー こばたさん : 運動している30代男性でも一日3000kcalくらいが必要量になります。
千葉さん : ですから、それくらいのエネルギー源を必要とするフルマラソンは、いつも不安なんです。今日走れるかな、最後まで行けるかなって不安で、お餅を食べておくと安心感がありました。消化に良くて腹持ちが良いので、お餅を食べたら自分は行けるというジンクスのようなものがありました。
増田さん : 精神的な面でも良かったんですね。お餅はどの様に召し上がっていましたか?
千葉さん : 私は外をパリッと、中をモチモチした感じで焼いてもらって、砂糖醤油につけて食べるのが大好きでした。
増田さん : そうですね。こばたさん、お餅は千葉さんのように砂糖醤油をかけながら、腹持ちが良いからと食べる人もいらっしゃいますが、消化はどうなんでしょうか?
こばたさん : お餅はご飯と比べて腹持ちが良いので、持続性がありますが、すぐに消化させたい時にはからみ餅、大根おろしだったり、かぶでも結構なんですが、おろした物と一緒に食べていただくと、アミラーゼという酵素が働いて消化を早めてくれるんですね。即効性もあり、持続性もありますので、食べ方次第で、とても活用法の広い食材だと思います。
増田さん : マラソン選手はお餅をよく食べますが、他のスポーツの選手をよく見ていらっしゃって、サッカー選手とか水泳選手とかはどうでしょうか?
こばたさん : 食欲が落ちてきたなという時でも、お餅はコンパクトなので食べやすいですよね。大事な試合の前ですと、緊張して消化吸収能力が落ちている選手もいますので、そういう意味で、Jリーガーの選手も競泳の選手も召し上がったりしますね。
お餅トークショー 増田さん : こばたさんご自身も東京マラソンを走られているんですよね。
こばたさん : 実は千葉さんにも助言をいただいて、練習方法を変えたりして、無事に完走することができました。練習量が少なかったので、そこを食事でカバーと思いまして、私もお餅をしっかりレース前に食べました。その時は汁物の中にお餅を入れて食べたんですね。
千葉さん : 市民ランナーの方ですと、5時間以上かかる方も多いじゃないですか。そういう方はレース前にお餅を食べると、途中でお腹が減るという事もないですしね。
こばたさん : 増田さんがレースに出ていた時はいかがでしたか?
増田さん : 私もお餅を食べていましたね。小豆が好きで、ゆで小豆の缶を開いて、お餅を柔らかくしていただいていました。
こばたさん : あんころ餅もすごく良くて、お餅の糖質と、あんこの中にお餅をエネルギーに変える時に必要になるビタミンB1が入っているのでセットで摂るとエネルギーになりやすくなります。
増田さん : 組み合わせも大事なんですね。
お餅トークショー こばたさん : 先ほど、千葉さんも定食スタイルで食べたとおっしゃっていましたが、多分、レースの前もお餅だけでなくておかずも召し上がっていたと思うんです。そこでビタミン類も摂っていれば、エネルギーに変えやすい形になるので、すごく良いと思います。
増田さん : アスリートだけではなくて、一般の人も参考になるような、お餅との付き合い方、お料理方法はありますか?
こばたさん : 寝坊した時に、何も食べないで仕事に行ったり、学校に行くと、集中力が欠けてしまうんですね。頭のエネルギー源は、唯一糖質です。お餅の中にはたくさん糖質が入っているので、それを食べていただきたいですね。お餅は1分で準備ができますし。
増田さん : それは寝坊した時に良いですね。
こばたさん : 常備餅としていつも冷蔵庫の中に入れておいていただければ、寝坊してもすぐに朝食として活用できると思います。
増田さん : それはどういう食べ方なんですか?
こばたさん : いろいろな食べ方があります。後で皆さんにも実際に食べていただきたいと思いますが、お餅の上にベーコンやハムを載せて、レンジで加熱するだけでも結構ですし、あるいは何も付けずにレンジで加熱をした上で、お醤油とお砂糖で甘辛餅にしていただいても良いですね。洋食でも和食でも活用ができます。
千葉さん : 洋食でも?和食のイメージがありましたけれどもね。
こばたさん : お餅ピザは子どもに大人気のメニューですね。
増田さん : いろんな競技種目があって、千葉さんもいろんなスポーツ選手と接しているけど、お餅に限らず、強い選手ほどよく食べますね。見ているとビックリしますよ。
野口みずきさんというマラソンで金メダルを取った人なんかは、速いって事で有名になる前に、よく食べる事で有名でしたよ。北海道で男女の合同合宿があったんです。男子選手は暑い夏に40km走を行うとぐったりして、夜は食欲がなくて、町の人がバーベキューを開いてくれても野菜しか食べていないんだそうです。
そこで、バーベキュー前に陣取って、2時間半、肉を食べ続けていたのが野口みずきさん。すごい選手がいるって言ったら、どんどん強くなったそうです。千葉さんも、Qちゃんとかいろんな選手に会ってきているけど、そういうのはないですか?
千葉さん : この間も、北海道マラソンでQちゃんと3人でご一緒させてもらったんですけど、その時も魚の目玉を喜んで食べたり、彼女は野生っぽいんですよ。
増田さん : キンキの煮付けが出たんですけど、自分のキンキの目玉を食べた後に千葉さんとか私に、「目玉、食べないの?」って聞いてきて、7つ食べましたよね。
千葉さん : 選手の時から、魚の皮とか鶏の皮とかも大好きで、人の皮を貰って、「宝物、宝物」とか言って、可愛らしいんですけど。
増田さん : 千葉さんはそういうところはどうでしたか?皮とか目玉とか好んで食べますか。
お餅トークショー 千葉さん : 私はちょっと苦手だったんで、Qちゃんは走りも食生活も野生っぽくて、さすがだなと思っていました。
司会 : ところで、食べ方で走り方も変わってくるんですか?
千葉さん : たくさん食べられる選手は強くなれると小出監督はいつもおっしゃっていますね。
増田さん : こばたさんはいろんな種目のスポーツ選手を見ていらっしゃいますが、そんな中で忘れられないエピソードとか、選手はいらっしゃいましたか?
こばたさん : 高校生のチームで、おかずはいっぱい食べても、運動中のエネルギーになる糖質が含まれているご飯とかお餅とか、主食をあまり食べないチームがあったんです。でも、強くなりたいなら、丼飯とかお餅をたくさん食べてとお話をしたら、その選手達は1年後に体重が4kg増えて、体脂肪が減っていたので、筋肉が増えたんです。そのおかげで、怪我も少なくなりましたし、試合もどんどん勝っていったので、やっぱりエネルギーになるものを摂るって大事だなと改めて思いました。
増田さん : 食事の面で、鍛錬期の食事と、大会前の食事とか、ずいぶんと工夫されるんじゃないですか?
こばたさん : 市民ランナーで体重50kgの選手が低強度の運動後、次の日に疲労を残さない為には、大体、体重1kgあたり、5〜7g/日の糖質が必要なので、糖質を食パンで摂ろうと思ったら、1日で6枚切りの食パンを10枚前後(9〜13枚)摂らないといけないんですね。それを摂るのはちょっと大変だと思うんですが、お餅だと10個から14個くらい。1日に3回に分けて食べれば1回に3個、4個で食べられる量なので、食パン3枚食べるよりはお餅を3個4個食べる方が食べやすいですよね。強度の高い運動の場合には、エネルギーになる糖質の必要量がすごく多くなりますので、体重50kgの一流ランナーですと、お餅20個から24個の量を食べないといけない。それを食パンとかご飯とかで食べても結構なんですが、お餅の場合はコンパクトに糖質が摂れるというメリットがあります。
増田さん : コンパクトというのがいいですね。
お餅トークショー こばたさん : こちらに100gあたりの糖質の量を書きましたが、ご覧いただいてお分かりの通り、ご飯ですと、100gで37gの糖質が摂れるんですが、お餅だと50gも摂れるんですね。同じ重量でも糖質をたくさん摂れるということでは、選手にとってはすごくメリットがあります。他の料理と比べてもダントツに糖質が摂れますので、こういった部分でもお餅は優れていると思います。
例えば箱根駅伝で、たすきが繋げないという事がありますが、あれは血糖値が下がちゃった状態が多いんです。その時にすぐに血糖値を上げてくれるのがブトウ糖です。スポーツドリンクなどに入っているのが麦芽糖などで、このあたりは消化吸収がすごく早いんです。一方、ご飯とかお餅に入っているのが一番下のデンプンで、ブトウ糖が何百個も連なっているので、吸収がゆっくりなので腹持ちが良い。ただ、先ほどご紹介したように、大根なんかと一緒に摂っていただければ効率よく早く摂ることもできますので、上手に活用していただくと良いと思います。
そういった意味からも、スポーツの前にお餅を食べる、あるいは疲労回復を期待して、レースの後にもお餅を食べるのもいいですね。
増田さん : なるほどね。お餅というのは体だけではなく、脳にもブドウ糖が働くという事ですね。
こばたさん : ビジネスマンの方もそうですし、学校に通っているお子さん達もテストの前にしっかりとお餅を食べていただいて、頭にも栄養補給していただくと良いと思います。
増田さん : 千葉さんは、走っている時にすごく駆け引きが上手で勝負師でしたよね。あれはお餅を4つ食べているのが良かったのかもしれませんね。
千葉さん : そうですね。脳にも良い影響があったんだと今気づきました。本当にスタミナが切れてしまうと、意識が朦朧としてしまうというのはありますからね。